日本は「尖閣」を半世紀以上は実効支配するべき。
なぜ尖閣は死守すべき領土なのか?
その地政学的な重要性について福島香織氏は語る。
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
尖閣諸島の地政学的な重要性とは
またさらに、国民の意識を変える必要性がある。おそらく日本人の中には、人も住んでいない尖閣諸島を守るために、紛争を引き起こしうるようなまねは絶対すべきではないと考える人が少なくないだろう。尖閣諸島など中国にやってしまえ、という人もいるくらいだ。
だが、日本が世界第六位の海洋国家の地位を維持するためには、どのような小さな島であれ失うわけにはいかない。そして安全保障上の見地からいっても、尖閣諸島は台湾から沖縄にかけての第一列島線をつなぐ鎖のわっかのような存在である。
中国にとって海洋覇権の野望は、まず第一列島線以内から米軍の影響力を排除すること。次に小笠原諸島、グアム、サイパンを結ぶ第二列島線の内側まで中国のプレゼンスを利かせることであるが、尖閣諸島を中国の領土とできるか否かは、中国にとってその戦略の成否を左右するポイントである。
逆に日本にとって、尖閣諸島は地政学的な重要性からいっても死守する価値のある領土であると認識しなくてはならない。また主権を守るためには好むと好まざるとにかかわらず軍事力の裏付けが必要であることも知らなくてはならないだろう。
東海大学海洋学部の山田吉彦教授の受け売りであるが、領海がかつて三カイリと決められていたのは、当時の大砲の射程距離が三カイリだったことに由来する。主権とは大砲の弾が及ぶ距離、すなわち軍事力によって担保されるという本質を示すエピソードだ。国家や主権、安全保障の本質の部分をちゃんと理解して、国政の場で防衛問題や安全保障問題が議論されているときに、戦争反対といった単純な理想論によって議論の成熟を妨害しないことも重要だろう。